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宇宙とテクノロジーについての解説

NEXTSPACE vol.3 宇宙開発の若手ワークショップ「NEXT SPACE」〜アポロ着陸50年後の今を生きる〜

NEXT SPACE vol.3 宇宙開発の若手ワークショップ「NEXT SPACE」〜アポロ着陸50年後の今を生きる〜

 

2019年8月18日に東京日本橋にある宇宙ビジネス拠点X-NIHONBASHIを開催しました!!

 
今年でアポロ船が月に着陸してから50年が経ったということで、民間主導で宇宙開発を加速していくこと、過去から現在、そして未来と、宇宙開発の歴史を繋いでいくという意図を目的として、「NASAアポロ着陸50年後の今を生きる」というテーマのもとに、元NASASpaceXJAXA や、日本の宇宙ベンチャーで活躍する若手エンジニアの皆様に集まっていただきました!

 

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今回で第三回目となるNEXTSPACE、 だんだんと若手宇宙開発のコミュニティができて来ています。このNEXTSPACEが場となり、宇宙業界の人も、宇宙に関わっていない人も、色々な人とこの場で交流し、新しいイノベーションのきっかけとなって来ています!

 

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50年前はNASAなど政府関係の研究機関が主導で行ってきた宇宙開発を、令和の時代には、日本の民間宇宙ベンチャー企業も世界の宇宙開発に参画し、海外からも優秀なエンジニアが入ってくるようになりました。ISSの実験モジュールで働くロボットを日本の宇宙ロボットベンチャーが手がけることを50年前に想像できなかったでしょうか。。。

  
宇宙の道に足を踏み入れた時から、民間の宇宙開発が活発になり始めている時代に突入し、今の20代の宇宙開発世代にとって、宇宙開発が身近になった世代であるとも言えるでしょう。そのような世代を私たちは、ニュースペースネイティブたちと呼んでいます。

 
「若手の宇宙開発世代(ニュースペースネイティブ)ができること、宇宙開発における若手の役割とは何だろうか?」、「アポロ着陸50周年の今、ニュースペースネーティブたちが描く10年後、20年後の宇宙開発の未来はどのようなものだろうか?」、この会を通してゲストや参加者たちと共に議論することができました!

 
 
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1人目の発表者は、

株式会社Astroscale: ソフトウェア・リードエンジニア「ガイ・ナット」氏

 
NASAジェット推進研究所(JPL)エンジニア、であり、複数の宇宙開発組織に関わっていました。

 

ワシントン大学情報科学と航空宇宙工学で修士号取得後、アメリ任天堂にて5年間勤務。SpaceX、ispaceでのインターンを行いその後、NASAジェット推進研究所(JPL)に勤務。 現在は東京錦糸町にあるAstroscaleでコンピュータービジョンを始め、 フライトソフトウェア、航法誘導制御(GNC)、3Dデータ可視化などを担当されています。 
 
ガイ氏は大学時代、画像処理、制御、航空宇宙工学的な観点を組み合わせた研究を行い、NASA JPLインターン時代には、ロボットの制御と3次元でのデータ可視化や、センサーデータと3次元モデルデータを組み合わせて遠隔ロボットの操作を行なっていました。SpaceXでは、ファルコン7、ドラゴンのプロジェクトに関わっていたそうです。その後は日本の東北大学でhakutoプロジェクトに参加、地上からコントロールするパネルの開発やローバーのホイールの回転制御ソフトを担当されていました。

 

他にも宇宙飛行士の複雑なタスクを援助するために、XRで宇宙開発の可視化を進め、オンサイトというプロジェクトではAR、VRで火星表面を体験できるようなシステムを作り、本物のデータから科学的に正しい3次元のモデルを作り、宇宙を体験できるように貢献してきました。それを世界中の地質学者たちに提供し、まるで本当に火星表面にいるように再現できるようになり、実際に地質学的に新しい発見にも繋がって、今でも週に一度くらい世界中の研究者が仮想空間上で火星に集まり、その地点での地質の話をしているそうです。また、Curiosityローバーの開発では自律性に着目し、ローバーが考えている思考を可視化すソフトを開発していろんなバグの早期発見に繋がったそうです!

 
現在は、日本の宇宙デブリを掃除しようとする宇宙開発ベンチャーアストロスケールに就職し、ゴミを大気圏で燃やせるということを検証するための実験に携わっています。わざとゴミを大気圏に落として、ゴミを燃やすことを可能にする、自律性がポイントとなる技術開発に携わられています。軌道ランデブーのためのコンピュータビジョン、GNCのためのフライトソフトウェア、組み立てを練習するためのAR、実験を行うためのデータ生成、テレメトリーの解釈や可視化などを研究開発されています。

 

宇宙へ憧れるきっかけは何でしたか?

「ある日、フライト中に読むため空港で偶然にカールセーガンの本『コスモス』を買って熟読し、飛行機が目的地についた時には宇宙業界に転職しようと決めました。」

 

アメリカの若い人たちの仕事としての宇宙への興味はどんな感じですか?

アメリカでも若手の人たちが宇宙に興味を持っていても、IT業界がお金持ちだから、そこに人材が流れてしまう。しかし、今はGAFAのようなアメリカビッグITカンパニーが宇宙事業を初めているし、アメリカでも小さなベンチャーが立ち上がっている。半分くらいの同級生は、宇宙系に就職しています。」

「宇宙はこれからも進化するけど、インターネット業界よりは進んでいない。給料面も加味すると、パッションがないと宇宙業界を選択できないだろう。そしてその状況は、業界がお金を儲けたら状況が変わってくると思います。」

 

NASA JPLから日本の宇宙ベンチャー アストロスケールに就職したのはなぜですか? 

「大手のように専門化して限定的なスキルに止まるよりも、小さい会社で常に人が足りない状況の中で、いろんなことを経験し、成長を体験したかったです。自分の成長のために、小さい会社で働いて見たかった、その上に、これまでの日本語を日本語のスキルを活かしたかった仕事がしたかったんです。」

 

航空宇宙科学と、情報科学を学ばれたらしいが、航空宇宙工学はどのように役立ったちましたか?

「宇宙船がどのように動いているのかなど体系的に宇宙のことを知れました。航空宇宙工学、情報科学、その両方があるからこそ、今の仕事ができています。」
 

 

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2人目のゲストは、 
「坂本 勇樹」氏

JAXA宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所

プロジェクト研究員

 
早稲田大学大学院博士課程取得後、JAXA宇宙科学研究所にプロジェクト研究員として入所。 
 
在学中は極超音速航空機用エンジン開発グループに所属し、現職では再使用ロケット実験機開発グループに所属、ロケットの燃料として用いられる液体水素の沸騰流動現象について研究し、現職では,再使用ロケット実験機の開発に従事する他,極低温流体の沸騰計測技術の研究や沸騰に伴う諸現象を研究されています。

 

液体水素はロケットエンジンの燃料になり、燃料として優秀な特性があるが、とにかく冷たく(-253度)、その扱いが難しいそうです。配管を詰まらせてしまうなど、必要な燃料が送れないなどのトラブルが出てしまいます。そこで坂本氏は水素の沸騰現象、沸騰の測定手法の開発流動特性の解明を行っています。

 
液体水素の研究が宇宙開発にどう貢献するのでしょうか・・・??

宇宙空間で何回かエンジンを止めたり起動したりする、この時に、どうしたら早く冷えるか、液体水素燃料の流動性も制御をしないといけないため、無重力の条件を作って、非常に冷たい液体の流動性を観察する実験を行なったり、沸騰の計測をするセンサーなど世の中になかったため、坂本氏自身で作ったりされています。ロケットのエンジンに坂本氏が設計したセンサーが積まれ、エンジンにガスが混じらないかを検知するなど、自分の作ったセンサーが宇宙に行くことに感動し、宇宙業界の仕事をしたいと思ったそうです。坂本氏の技術は現在、再使用型ロケット実験機の開発に役立っています!再使用ロケットの利用は米国を中心に進んでいます、しかし日本でも再使用型ロケット開発に関わる要素技術とノウハウは蓄積されているそうです。

使い切りの世の中でロケットをいっぱい作るよりも、使いまわしてコストを下げることで、宇宙へのアクセスが定常的になる未来ができるようにと、日々研究開発に励まれています!

 

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3人目のゲストは、

「長坂 信吾」氏

GITAI Japan 株式会社 HAPTICS ENGINEER

 
大阪大学大学院基礎工学研究科を修了、2015年に株式会社デンソー入社し、レーザ接合技術、生産システムの開発などにに従事その後、2018年 GITAI Japanに入社。現在は宇宙ステーション内の作業を宇宙飛行士の代わりに長期間現地で作業可能なロボットを開発、テレプレゼンスロボットのhaptics、human interfaceなどの開発に従事されています。

 
宇宙での作業の需要に対して、宇宙飛行士の代わりにロボットを代替するとい発想を持たれていて、オフィス内には宇宙船の模擬実験設備も備えています。GITAIのロボットはロボットには難しい、柔軟物を扱う、つまみを回す、コネクターやケーブル類を扱う、冷凍庫を開けてサンプルを取り出すなど、人間を真似た複雑な動きを遠隔操作で行えます。操縦者の人は、VRゴーグルをつけてロボットを操作し、ネジを回したり実際に宇宙飛行士が船内でやることをロボットにさせています。JAXAが提示した宇宙飛行士の主要作業18個のうち、13個をロボットで実現したそうです!

 

なぜ宇宙を目指すんですか?

「GITAIは移動コストを0にする。それがGITAIの真価。移動コストがもっとも高いのは宇宙だとすると、宇宙での宇宙飛行士からロボットへの労働代替はインパクトの高いものになるはずです。」 

 
「GITAIのロボットは今後5年間は船内作業、そして船外作業、そして月面都市での作業など本当に作業できるロボットを開発していきます。」
 

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パネルディスカッション

日本の宇宙開発の発展に必要なことは?

 
「失敗を恐れないこと、失敗から学ぶこと。日本人は失敗を恐れすぎている。スペースXでは失敗しても、イーロンが大丈夫といえばそれで問題なかった。アメリカでも失敗に対する反応は強いけど、失敗しても会社が悪いわけでなく、エンジニアリングには失敗がつきものだ。それをできるだけ多くの一般に人に知ってもらいたい。」

 
「宇宙開発をスピードアップすることそれが若手としての宇宙開発の役割。AIなど最近の技術へのアンテナが敏感。宇宙業界は古い技術が多いので、新しい技術を取り入れていくところに若手のバリューがある。」

「当たり前に宇宙開発があるのが若手、新しいものをキャッチアップし宇宙開発に取り入れ宇宙ネィティブとしての役割を果たしていく。」

「自分自身が頑張らないとと思っているのは、バカにされても頑張る。みたいなこと。若いうちじゃないと失敗できないかな、だから怒られない程度にチャレンジングなことをしていく。泡一個追いかける研究、こういうのやりたいといえば、やらせてくれる、環境が僕たちには重要。」

アメリカで経験したことだけど、大きな違いは、上司に同僚みたいに話し合えるかどうか。でも日本だと上司だから反対の意見はいえないとか、違うなと思っても、正直にいえないとかそういう現象があるからこそ、技術開発の遅れが発生するんじゃないかな。若い人が最新の技術をよく知っている。若い人の意見を借りた方が効率がいい場合がある。」

「上司に新しいアイディアを提案するなどが若手の役割じゃないか。こういうアプローチができて、最新のテクノロジーで解決できるところを提案していく。上司に説得するのが難しい時がある。でも言い方について考えて、特に年上のエンジニアに対してはプレゼンを使って証拠を出して、論文の結果など、伝え方を変えながら、説得するのがいいと思う。それは上司が硬いからじゃなくて、根本的に伝わってない可能性がある。」

 
「全然関係ない人と話すこと。ダブルディグリーで学ぶのは重要。社会に出てから学ぶのは大変。自分の専門分野に閉じても、新しい発見が少ない。聞きたい時に聞ける人を持っておく、とかそういうのを学生の時にやっておけばよかった。と思った。一番いいのは、いろんな学部の人たちとコラボしているのがいいと思う。ロボットを作るにはいろんなスキルが必要になる。」

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宇宙開発の最新の動向をキャッチアップしながら、現状の課題を共有し宇宙業界の縦のつながりだけでなく、組織や産業の横のつながりを育てていく場・コミュニティとなっています!

ネクストスペースでは、すでに宇宙開発に関わっている人だけでなく、今後宇宙開発に関わりたい方、興味がある方、以下に該当するような皆様には奮ってご参加いただきたいと思います!^ ^

  • 宇宙開発の研究に携わっているエンジニア・研究者
  • 宇宙開発の起業家
  • 宇宙開発の仕事をされている方
  • 宇宙産業の動向が気になる方
  • お仕事として宇宙に携わりたい方
  • これから宇宙開発にイノベーションを起こしたい人

 

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💫次回のNEXTSPACEのお知らせ🌠

NEXTSPACEは11月23日開催です!٩( 'ω' )و

詳細もすぐに公開いたします、ぜひ皆様遊びに来てください!

 

第4回 宇宙開発の若手ワークショップ「NEXT SPACE」~(仮)気づけばあなたも宇宙にむちゅう~

 

ptix.at

 

◉過去の開催案内(参考):


第2回NEXTSPACE

https://nextspace-vol1- byyspace.peatix.com/

 


第1回NEXTSPACE

https://nextspace-vol1- byyspace.peatix.com/